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2022年度 診療報酬改定の概要と経営対応

2022.03.24

株式会社 ASK梓診療報酬研究所 所長

中林 梓氏


 2022年2月22日にオンラインで開催した「JBCCヘルスケアユーザー会2022」では、株式会社ASK梓診療報酬研究所 所長の中林梓氏を講師にお招きし、「2022年度 診療報酬改定の概要と経営対応」と題して、今回の診療報酬改定のポイントと今後の病院経営の在り方についてお話しいただきました。当日の内容を要約してご紹介します。


 今年度(2022年度)の診療報酬改定では、本体が+0.43%となっていますが、全ての病院にこの0.43%がいくわけではありません。本体の真水では+0.23%で、これに看護職員処遇改善+0.2%、リフィル処方箋導入-0.1%、不妊治療+0.2%、小児感染防止加算期限-0.1%を合わせると、0.23+0.2で0.43になります。ただ、全ての病院が不妊治療をやっているわけではないですし、クリニック(診療所)には看護職員処遇改善は適用されません。このからくりを最初に知っておいてください。


 今回の改定の重要ポイントは、以下の通りです。


・連携評価の新たなフェーズへ

地域連携・院内連携・他職種連携

データヘルス改革・デジタル改革の本格化

かかりつけ医の評価と外来機能の明確化

オンライン診療だけではなくオンライン活用の拡大

急性期入院医療は何を何処を評価したのか

地域包括ケア病棟の厳しい改定の意味

回復期リハビリテーションの今後はアウトカム

療養病床の中心静脈栄養評価の対応

同時改定への布石を読み解く重要性



 今回の改定をピンポイントで捉えると間違えることになります。厚生労働省は次(2024年)の改定を見据えているからです。次の改定は介護との同時改定であり、第8次医療計画も入ってくるなど大きな改定になります。今回の改定には「次回はこうする」という布石が含まれているので、次の改定を見据えた経営対応を考えていただきたいと思います。



質の高い医療を目指し
感染対策の向上へ工夫を


 最初にコロナ関連から。クリニックについて、外来感染対策向上加算6点が新設されました。初再診料のほかにも在宅患者訪問診療料にもつきます。施設基準としては、院内感染管理者、感染防止対策部門を設置し医療有資格者を配置することが必要です。また、感染対策向上加算1を届け出ている病院や地域の医師会との連携が必要になり、今回の改定では、この連携関係が至るところでうたわれています。


 一方、クリニックにとって難しいと思われるのは、新興感染症の発生時等に、都道府県等の要請を受けて発熱患者の外来診療等を実施する体制を有し、また、自治体のホームページにより公開すること。発熱患者の動線を分ける体制が必要なことです。「うちのクリニックでは無理」という声も聞こえてきますが、何とかこの6点を取るために工夫してほしい。要請を受けたら、例えば、発熱外来と通常の外来と場所を分けるなどすればいいでしょう。


 病院については、今まで感染防止対策加算は2つでしたが、感染対策向上加算に名前を変えて3つになります。感染対策向上加算3は、中小病院や療養病床でも届け出ができるようになりました。同1・2も相当上がっているので、今まで1を持っていたところは1を、2を持っていたところは2を、持っていなかったところは3の取得を考えていただきたい。


 どうすれば評価を上げることができるかというと、1を持っている病院は2や3の病院に出向いて、感染症対策に関する助言をします。また、2や3の病院は1を持っている病院に定期的に院内の感染症発生状況等について報告、地域や全国のサーベイランスに参加する必要があります。


 新しくできた感染対策向上加算3の施設基準には、一般病床の数が300床未満を標準として、感染防止対策部門を設置することとあります。問題は、新興感染症の発生時等に都道府県の要請を受けて感染症患者または疑い患者を受け入れる体制に加えて、発熱患者の診療を実施する体制を有し、そのことについて自治体のホームページより公開すること。また、発熱患者の動線を分けるよう記載があります。1、2、3の条件を必ず確認いただいて、クリニックも病院も感染対策向上加算の算定を検討いただきたい。


 今回の改定の根底に流れているのが医療の質です。質が高いと思われるところには点数がついています。さらに言うと、外来患者をとにかくかかりつけ医に回そうとしているので、クリニックも病院も逆紹介する際には感染対策をやっているほうが評価されます。何とか工夫し、知恵を働かせて、算定に結びつけていただきたいと思います。



高度急性期医療の評価が向上
地ケアの厳しい改定の意味とは


 高度かつ専門的な急性期医療の提供体制に係る評価、急性期充実体制加算が新設されました。高度急性期でなおかつ専門的な医療をやっている場合は、14日以内の期間で大きな加算がつきます。施設基準について今わかっているのは、急性期一般入院料1を有する病院であること。機能評価を受けている病院またはこれに準ずる病院。詳細はこれからですが、ICUやオペ件数、救急の受入れなどが条件に入ってくるのではないかと思います。


 重症度、医療・看護必要度の評価項目及び施設基準の見直しに伴い、重症患者割合については、従来に比べて少し緩くなっています。例えば、急性期一般入院料1の病院の場合、「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度Ⅱ」の割合は2割9分でしたが、改定後は2割8分となります。一方、「重症度、医療・看護必要度Ⅰ」でやっていると該当患者割合は変わりません。Ⅱの下げ幅が大きいのは、データへルス・デジタル改革を反映しているものと思われます。


 さらに、重症度、医療・看護必要度の測定に係る負担軽減と測定の適正化を推進する観点から、一般許可病床数200床以上の場合で、急性期1を持っている病院は、「重症度、医療・看護必要度Ⅱ」での評価となりましたので、今回からはシビアに取り組んでいただきたい。


 重症患者初期支援充実加算も新設されました。これに該当するのは、救命救急、集中治療室(ICU)、ハイケアユニット、脳卒中ケアユニット、小児特定集中、新生児特定集中、総合周産期と新生児治療回復室入院医療管理料です。集中治療領域において患者の治療に直接関わらない専任の担当者である入院時重症患者対応メディエーターが、治療を行う医師・看護師と他職種とともに当該患者、その家族に対して、治療方針、内容等の理解及び意向の表明を支援する体制を整備していることが条件です。


 今回とても厳しかったのが、地域包括ケア病棟(地ケア)です。地ケアの入院料1と2、入院医療管理料1と2は、在宅復帰率が7割から7割2分5厘へ厳しくなりました。これは何となく皆さんクリアできると思いますが、同3と4については在宅復帰率が7割以上であることが要件に追加され、7割を達成していない場合は10%引きとなります。


 地ケアにはポストアキュート、サブアキュート、在宅復帰支援という3つの役割があります。したがって、在宅復帰をちゃんとやってください。やっていないところは10%引きますからね、ということを意味します。


 また、地ケアの入院料2と4を持っているところで、自院の一般病棟から転棟した患者割合が病床数200床以上の病院は全て6割未満というのが条件に加わります。200床以上の病院で地ケアを持っているところは、自院の一般病棟から移った患者さんが6割以上いると15%引きになります。


 ポストアキュートしかやっていない、自院の一般病床を助けるためにつくった地ケアで、とにかく一般病棟から患者を流してくるというところは相当厳しいことになります。もし該当するという病院があれば、取り急ぎ地域の介護施設やクリニック、特に在宅医療をやっているクリニックとの連携体制の構築を考えるべきです。つまり、直接介護施設や自宅から地ケアに入院する患者を増やす必要があります。


 地ケアの入院料1、2、入院医療管理料1、2で、許可病床が100床以上の病院は、入退院支援加算1を持っていないと10%引き。つまり、地ケアは在宅復帰支援をとにかくやらなきゃいけないので、そういうところは入退院支援加算1を持っておくべきだと言っているのです。もし100床以上で入退院支援加算1を持っていないところは、4月には間に合わないとしても、経過措置が9月末まであるので例えば10月までに人材を確保するとか、法人内での人材の入替えや採用など含め、どうにか入退院支援加算1を取ってほしいと思います。



紹介状なしの外来は
患者の定額負担が値上がり


 次に、回復期リハビリテーション病棟(回リハ)について。回リハ入院料5がなくなって、6が5になります。5が算定できるのは2年間だけ。つまり、2年間で実績をつくれないのなら、回リハはやめてくださいというような厳しい言い方です。


 また、回リハ入院料の施設基準となる重症患者割合も厳しくなります。1と2については4割以上、3、4については3割以上。いずれも1割ずつ上がります。


 回リハ入院料1と3については、日本医療機能評価機構による第三者評価を受けていることが望ましいとあります。毎年7月に第三者評価の状況等について届け出ることにもなりましたから、対応せざるを得ません。


 外来について。紹介状なしで受診する場合の定額負担の見直しがありました。今は、大学病院か、一般病床200床以上の地域医療支援病院は、紹介状を持たないで来院すると、患者さんは初診時に5000円を払う必要があります。今回、新たに一般病床200床以上の紹介受診重点医療機関になれば、そこも対象範囲となりました。金額も上がります。初診の場合は7000円になって、再診ではその都度3000円を払うことになりました。


 では、紹介受診重点医療機関となるための一般病床200床以上で医療資源を重点的に活用する外来とは何か。例えば、手術の前後の外来、化学療法や放射線治療のような高額な医療機器を外来で使っている、こういった外来が多い病院が重点的に紹介型になるべきではないかと考えます。


 定額負担の見直しについて、1点強調しておきたいのは、除外要件が大きく変わることです。定額負担を求めない患者さんのことですが、非常に重要です。ここでは再診についてだけ紹介しますが、


 自施設の他の診療科を受診している患者さんは、今まで除外でしたが、これが削除されました。例えば、ある患者さんが、ある病院の内科と整形の2科にかかっているとします。内科の先生が地元のクリニックを逆紹介した場合、引き続き整形にもかかっているので、この病院にかかり続けていても3000円はもらわなくていいという除外要件がありました。今回それがなくなり、大きな病院で2科、3科と複数にかかっていて、1科でも地元のクリニックに逆紹介した場合は、毎回再診のたびに3000円払わなければいけません。けっこう大きいですから、知っておいていただきたいと思います。


 初診料と外来診療料における紹介・逆紹介割合に基づく減算割合も変わりました。例えば、大学病院などは、紹介割合の実績が50%未満とか逆紹介割合の実績が30‰(パーミル)未満になると該当するので、こちらもぜひ確認しておいてください。



医者の働き方改革を推進し
質の高い医療に向けた見直しも


 急性期の地域医療体制確保加算の見直しがあり、520点が100点上がりました。施設基準は、年間で救急車2000件以上、またはハイリスクな総合周産期、小児特定集中、新生児の特定集中などをやっているところは1000件以上。また、総合周産期母子医療センターや地域周産期母子医療センターは、この救急車の条件がなくても、今回は適用されます。


 勤務医の働き方改革を推進し、質の高い医療を提供する観点から、医師事務作業補助体制加算について評価の見直しがあり、医師事務作業補助体制加算の1と2のいずれも上がりました。ただし、1を取るには、3年以上の勤務経験を有する医師事務作業補助者が、それぞれの配置区分ごとに5割以上必要です。配置区分が2カ所以上ある場合は、もう一度、医師事務作業補助者たちの勤務経験年数をカウントして、5割以上になるよう配置していただきたい。


 標準規格の導入に係る取組の推進もあります。診療録管理体制加算に係る定例報告において、電子カルテの導入状況及びHL7 Internationalによって作成された医療情報交換の次世代標準フレームワークであるHL7 FHIR (Fast Healthcare Interoperability Resources)の導入状況について報告が求められます。これはデータヘルス改革・デジタル改革の最たるものです。



対面とオンライン診療を
バランスよく利用すること


 情報通信機器を用いた初診に係る評価が新設されました。情報通信機器を用いた場合の初診料は251点、これは対面の87%ぐらいです。ここで注意していただきたいのは、もちろん「医師が初診が可能と判断した」と書いてあるのですが、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」については絶対に読んでいただく必要があります。これに基づいてオンライン診療を行ったというのが条件なのです。


 「原則として、保険医療機関内で実施」と書いてありますが、今回の改定から保険医療機関外でもいいと解釈できます。事後的に確認可能な場所であること、例えば、先生のご自宅などでもオンライン診療は可能なことを知っておいてください。


 ガイドラインには、日本医学会連合が作成した「オンライン診療の初診に適さない症状」や、オンライン診療初診での投与に十分な検討が必要な薬剤などが載っていますので、事前に理解した上で、導入していただきたい。


 再診料や外来診療料にも情報通信機器を用いた場合の評価73点が新設されたので、今までのオンライン診療料は廃止です。


 今まで全く認められなかった、ウイルス疾患指導料から薬剤総合評価調整管理料までについて、今回の改定にて全てオンラインで医学管理料請求可になりました。ですから、大きな病院もこういった患者さんがいらっしゃるというのであれば、例えば、コロナの感染が怖いから来院はしたくないという場合に、リフィル処方にすれば、2カ月目、3カ月目は来院がないのでレセプトは出ません。しかしオンライン診療であれば、毎月ちゃんとオンラインで診察するということに関して、医学管理料までの請求が可能になったというのが、今回のオンラインの拡大部分です。


 在宅もオンライン在宅管理料が廃止で、在宅時医学総合管理料に、月2回以上訪問診療等を行っている場合であって、うち1回はオンラインで行った場合の点数をけっこう高く設定しているので、在宅医療をなさるところは、対面とオンラインをうまく利用するということを考えていただくといいかなと思います。


 診療録管理体制加算の見直し。400床以上の病院は、サイバーセキュリティ対策と医療情報システムのバックアップ体制の確保が望ましいというのを要件に加えて、定例報告において当該体制の確保状況についての報告することを求めるとしています。400床以上にしたのは、小さいところだと、専任の医療情報システム安全管理責任者を配置するのが難しいと考えたからでしょう。しかし、小さな病院も情報を人質に脅迫されて、電子カルテや情報が使えなくなってしまったケースがあります。「400床ないから、うちは関係ない」というのではなくて、サイバーセキュリティ対策に関しては、どちらの医療機関も気にしておいていただきたい。



デジタル改革は待ったなし
オンラインを活用し連携強化を


 冒頭にお話ししたポイントに関して、私からのお願いです。


 今回の改定では、連携関係のものがいっぱいありました。皆さんの病院やクリニックが地域医療の一員だという意識を持っていただく必要がありますし、院内の連携関係で問題があるなら、問題点を洗い出す必要があると思います。


 データヘルス改革・デジタル改革についても、2024年問題。いわゆる高齢者が増えて、若い人が減っていくときに、こういったものを本格化していかないと大変なことになるので、組織全体で意識改革をして、何とかついていってほしいです。


 かかりつけ医の評価と外来機能の明確化に関しては、マーケティングをやってほしいと思います。1年後ぐらいでいいので、どことどこの病院が紹介型になっていくのか、自院も含めて地域の状況を確認してください。


 オンライン診療は、組織としての取り組みを明確にするとともに、連携先とどういうふうにすり合わせていくかを検討しておくこと。


 急性期入院医療は、ご存じのように高度急性期を分けてきました。自院の急性期の意味の確認と地域の医療提供体制、地域医療構想の確認を今一度お願いいたします。


 地域包括ケアは、ポストアキュート、サブアキュート、在宅復帰支援という3つの役割を必ずきちんと意識すること。今回下がったというところは、現状の問題点を把握し、対策を考えてほしいです。


 回リハは、今後はアウトカムを意識することと、連携先の確認と実績のバランスを意識していただきたい。


 療養病床は、摂食機能療法や嚥下内視鏡検査(VE)・嚥下造影検査(VF)の連携体制などを考えておいていただきたいと思います。


 地域連携、院内連携、他職種連携の重要性が叫ばれる一方で、第6波の中、難しいのも事実です。何と言っても今回の改定は、オンラインで様々な連携が可能なことを言っています。オンラインを活用した連携強化を最後にお願いしたいと思います。







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