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医療におけるDXと組織の変化ー地域医療連携推進法人の取り組みー
JBHC医療総合セミナー2022 in 大阪講演禄

2022.08.18

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社会医療法人 誠光会 法人本部 副本部長

地域医療連携推進法人湖南メディカル・コンソーシアム 理事

䕃山 裕之氏




 2022年6月11日に開催した「JBHC 医療総合セミナー 2022 in 大阪」では、社会医療法人 誠光会 法人本部 副本部長の䕃山 裕之氏を講師にお招きし、「医療におけるDXと組織の変化ー地域医療連携推進法人の取り組みー」と題して、地域医療連携推進法人湖南メディカル・コンソーシアムにおける、DXの推進と組織の変化についてお話しいただきました。当日の内容を要約してご紹介します。



DX推進の到達点


 社会医療法人誠光会(滋賀県草津市)は、2020年にケアミックス病院であった草津総合病院(719床)を高度急性期医療を担う淡海医療センターと、在宅療養支援機能を担う淡海ふれあい病院の2つに分離しました。このことは、すべての機能を法人内に有する、所謂、法人完結型医療から脱却し、地域における誠光会が担うべき医療を再定義し、他の法人と連携し、互いに補完することで地域の医療を完結することに方針を転換したことを意味します。

 また、同年、「地域医療連携推進法人湖南メディカル・コンソーシアム」を設立しましたが、こちらは滋賀県の全人口141万人のうち、約半数となる68万人の人口を抱える大津・湖南の2つの医療圏で認可を受けて活動をしています。現在は31法人99施設が参画していただいています。本日は、この地域医療連携推進法人によるDXの推進と組織の変化についてお話しします。

 本題の前に、まず共有しておきたいのが世界の高齢化率の推移についてです。1985年までは先進国のなかで日本が最も低い国でしたが、それからたった15年で最も高齢化が進行する国となりました。高齢化が進行し、働く世代が減少していくなか、医療機関の経営はどうなっていくのでしょうか。経営戦略とは、ヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源を最大限活用し、成果を上げることが目標となりますが、最も大事な資源である人的資源が減少し、さらに働き方改革も進んでいきますので、限られた人的資源をいかに有効に活用するかがこれまで以上に求められます。

 DXの推進は、これらの解決の1つになり得ますが、そもそもDXとは単なる情報の見える化や業務の効率化を図るデジタライゼーションとは異なります。到達点として、デジタル技術を用いて経営や事業のあり方、もしくは生活や働き方の変革を期待するもので、私たちが目指しているのもここになります。今後、急速に進むデジタル社会とは、例えば馬車が交通手段であった1900年のニューヨーク五番街が、たった13年で自動車が溢れかえる街へと変貌した史実に近しいと言えるのではないでしょうか。



社会医療法人誠光会の活動概要


 はじめに当法人として注力してきた取り組みについてご紹介します。1つは、医療需要と機能別病床数の最適化です。淡海医療センターは、1982年に草津中央病院の名称で156床で開設し、2006年に2つの病院を統合して719床としました。急性期病床を412床抱えていたものの、市の人口に比して釣り合っていなかったことから14年に354床に削減し、108床を地域包括ケア病棟に、19年に100床を介護医療院としました。続けて20年・21年で、199床を淡海ふれあい病院に、420床を淡海医療センターへと機能分化しました。ご存じの通り「医療センター」は、原則公的医療機関が使用する名称となっています。市民病院がない草津市において、その機能を有する病院ということで行政から認めていただき、この名称を使用しています。

 並行して取り組んだのは、各施設の存在意義の再定義です。719床のケアミックス病院だった当時は法人内ですべての医療を完結する方針を掲げ、法人内の各施設はあくまで病院の付帯施設として捉えていました。しかし時代のニーズは地域完結型医療となり、法人の各施設が地域で求められる機能を担い、独立した事業体として存在することが求められるようになりました。そこで、当法人の存在意義を定義し、職員が取り組みたいことを患者さんや医療圏のニーズを確認したうえで実行する「パーパス(存在意義)経営」を志向しています。地域完結型医療の一員として、法人内の施設ごとの特色を引き出し、その地域で機能が重複しないよう調整し、連携することが地域完結型医療の一員としての使命であると考えています。



データを活かす組織文化


 2つ目は、経営管理機能の強化(データを活かす組織文化)です。当法人では、各部門の収支を毎月明らかにし、全職員が参画する各部門のミーティングで経営課題の解決を図る取り組みを続けてきました。このミーティングには経営管理部門が必ず参加し、ベンチマークデータ等を活用して各部門の運営にアドバイスをしています。

 成果として目覚ましかったのは、循環器内科と看護部でした。まず循環器内科は、さらなる医療の高度化を目指すという方針のもと、高密度な医療を短期間に提供することになりました。部門経営についてもこれまでの稼働率重視から単価重視へと方針を変更し、それに沿った活動を行った結果、平均在院日数の短縮や新入院患者数の増加等、次々に成果を上げられることになりました。看護部では、全入院患者に占めるDPCⅠ期およびⅡ期の割合を65%以上とするという方針のもと、稼働率より平均在院日数短縮を優先したことで、単価が向上し、収入がアップしました。

 これらを推進するなかで各現場から上がってきたのが、急性期と慢性期を明確化し、さらなる機能強化を訴える声でした。これが、病院を分離する端緒となりました。

 私たちの経営改善では、2年ごとの診療報酬の動向に適応することよりも、内部・外部・未来との整合性を目指した経営戦略とすることを最も重要視してきました。また、中期計画にはサービス・マーケティングの考え方を取り入れ、人財育成に力を入れています。



DXと間接部門の統合


 それでは、地域医療連携推進法人湖南メディカル・コンソーシアムのDXについてお話しします。当連携推進法人の運営方針は、地域住民が切れ目なく医療・介護・生活支援を享受できるようにすることです。この為に必要となるのが、参画病院や施設の稼働状況、患者さんの状態、スタッフの配置状況や業務量等あらゆる情報を、タイムリーに相互把握できる仕組みです。そこでGEヘルスケアジャパンの協力を得て取り組んだのが、医療・介護現場の運営に関する意思決定を支援するシステム「コマンドセンター」です。コマンドセンターには電子カルテ等に入力されたあらゆるデータが流れてきてリアルタイムで解析します。これらを活用することで、誠光会においては、①稼働率の向上、②在院日数の短縮、③重症化への事前対応、④看護師の残業時間の削減――といった成果を出しています。現在はまだ参加施設が限られていますが、いずれは地域の多くの施設で活用できれば、今後本当に必要な病床数も明らかになってくるでしょう。

 一方、地域連携推進法人として、間接部門の統合も積極的に推し進めています。それぞれの法人で行っている、給与計算、購買、施設管理、経営管理、広報といった間接業務は参加施設によってそれほど内容に大差はありません。これらを集約し、各間接部門に要する人員を削減するとともに、規模の小さい法人では費用対効果が見合わないAIやRPA(ロボットによる定型業務の自動化支援ツール)を導入することで、生産性の向上を目指しています。 

 また、間接業務を集約することでこれらの業務を専門的に担う人財が育成されることも狙いの一つです。多くの医療・介護の法人様と関係を持たせていただいていますが、赤字の法人も黒字の法人も現場の職員は懸命に働かれています。現場が働かないことで赤字となっている法人は一つもないと思います。では、どこでこの差が生まれるのかというと要因の一つに、間接部門、言い換えると経営資源管理を担う部門が優秀かそうでないかが挙げられると思います。湖南メディカル・コンソーシアムでは、そういった医療・介護の経営資源管理をしっかりと担える人材を育成することで地域の皆様のお役に立てる存在となっていきたいと考えています。







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