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病院に適した人材採用と育成で医療の質を向上!
~「断らない病院」を支える看護部づくり~

2021.06.01

kitteshi.jpg●著者プロフィール●

切手 純代(きって・すみよ)氏

医療法人社団永生会南多摩病院

副院長補佐 看護部長




八王子市西部に位置する医療法人社団永生会南多摩病院は、年間の救急搬送受入件数が5000件を超えるなど、地域の頼れる急性期病院です。新型コロナウイルス感染症患者の受け入れも、2020年2月に横浜港に寄港したダイヤモンド・プリンセス号に乗船していた感染者を受け入れるなど、感染拡大の初期から行ってきました。そうした体制を支えるのが約200人の看護師です。その陣頭指揮を執る切手純代・副院長補佐兼看護部長にお話しいただきました。

 

新型コロナ陽性患者も含め「断らない病院」づくり


 南多摩病院は170床の急性期病院です。「24時間365日、断らない病院」を目指して運営していますが、看護部もそうしたチームの一員として頑張っています。今年2月には病床稼働率が99.9%になりました。厚生労働省の「病院報告(平成30年9月分概数)」によると、主に急性期機能を持つ一般病院の病床利用率は70%台ですから、皆の頑張りがわかります。


 24時間365日、いつでも患者さんを受け入れるには、救急外来の充実ももちろんですが、病棟の柔軟な対応も欠かせません。一般的には、病院は「内科病棟」「外科病棟」「循環器病棟」など、診療科ごとに病棟がわかれています。当院も基本的にはその体制をとっていますが、空いている病床がある場合は、当該診療科にかかわらず入院を受け入れています。
 必要に応じて「内科病棟だけれども循環器疾患の患者さんを受ける」「外科病棟だけれども整形外科の患者さんを受ける」ことで、断らない医療が実現できています。そのためには、どの病棟にどの診療科の患者さんが入院しても、「安心して看てもらえる」と感じてもらえる看護の実践が重要で、看護部の目標に挙げて取り組んできました。現在では外来から緊急入院の受け入れを依頼すると、どの病棟も「わかりました」の一言で対応してくれます。



 新型コロナウイルス感染症対応でも、「断らない病院」を貫きました。2020年2月にダイヤモンド・プリンセス号が横浜港に寄港していた際から新型コロナ陽性患者専用の病棟を設けています。発熱や肺炎症状等、感染の疑いがある患者さんも受け入れているので、専用病棟は常に稼働しています。
専用病棟で働く看護師は手上げ方式で募りました。一部の看護師に過度な負担がかからないように、定期的に声かけして意思を確認し、またメンバーの入れ替えもしています。



「南多摩病院で働きたい」看護師が続々応募


「24時間365日、断らない病院」をつくるうえで、看護部も重要な役割を果たさなければなりません。看護師の確保に苦慮する病院が多いなか、この2年あまり採用する看護師は自由応募のみで人材紹介会社を使わずに済んでいます。


「24時間365日、断らない病院」に魅力を感じて看護師が多く集まってくれているので、やる気があり、本当にありがたいです。面接で「当院はかなり忙しいですけれど、大丈夫ですか」と尋ねるのですが、「むしろそういう病院で頑張りたい」と答えてくれます。「南多摩病院ならば、やりがいのある看護ができると聞きました」と言ってくれる応募者もいます。


当院は看護学部や看護学校の実習を受け入れていますが、新卒看護師のなかにはその実習での経験にやりがいを感じて、当院に応募してくる人がいます。これは実習指導を担当した看護師が看護学生の指導に力を尽くしてくれていることが大きな要因だと思います。



「身体抑制をしない」など看護の質向上にも取り組む


「断らない医療」だけでなく、もちろん、提供する看護の質をより良くするための努力も看護師皆で取り組んでいます。たとえば3年前から看護部の目標に「身体抑制をしない急性期看護」を掲げました。始めた当初の身体抑制率は20%を超えていましたが、現在は1ケタ%になり、ゼロ件になることもあります。


点滴やチューブを患者さんが自分で引き抜いてしまったり、ベッドから自分で降りようとして転んで骨折してしまったりといった、危険な行動を防ぐために身体抑制をせざるを得ないことがあります。そうした危険行動によって患者さんの状態がさらに悪くなることも考えられます。


 しかし、それを言い訳にしてはいけないと考えています。患者さんはなぜ、そういう危険な行動をとろうとするのか。これに目を向ければ、身体抑制をせずに済むことが多いのです。


 点滴やチューブを抜こうとしたのは、実はトイレに行きたくて身軽になりたかったからとか、ベッドから落ちかけたのは、床頭台に置いてあるメガネを取りたかったからとか、ベッドから移動しようとしたのは、陽だまりのある窓際に行きたかったから――と、看護師側からは「危険行動」と見えても、患者さん自身にとっては理由があり、ごく自然な行動であることも、かなりあるのです。


 そういったことに思いをはせるには、患者さんの「人となり」まで見て看護する必要があります。入院する前はどのような暮らしを送っていた人なのか。お酒の好きな人だったのか、あちこち動き回るのが好きだった人なのかなど、疾患だけに注目するのではなく、「一人の人」として見ることが大事です。


 そのために当院では、入退院支援にも力を入れています。入院前から退院した後まで、患者さんがよりスムーズにご自宅や施設に戻っていくためには、一人ひとりの生活の情報を得ることがとても大切です。


 外来と病院の一部一元化をスタートし、病棟の看護師が予定入院の患者さんと入院前から顔を合わせて馴染みになり、入院前の生活情報を得ることで、患者さんが安心して入院できるように取り組んでいます。また救急外来でも、看護師が入院する患者さんの必要な情報をできるだけご本人やご家族から聞き取り、それを病棟に伝えています。特に現在は、新型コロナの感染予防の一環で、ご家族は病棟に上がることができなくなっているので、そうした取り組みは病棟にとって本当に役立っています。


 また、救急外来看護師の手が空いているときは、病棟に上がり、入院生活に慣れない患者さんのベッドサイドへ行って、寄り添う看護を実践しています。1時間でも患者さんのそばにいたり、話し相手になるだけでもずいぶん違います。気持ちが落ち着けば、危険行動をとる回数が減ったり、身体抑制をせずに済むこともあります。


 こうした取り組みは、患者さんとの信頼関係を築くことでもあります。特に高齢者が救急搬送されてきた場合、良い結果ばかりとは限りません。患者さんがいざその時を迎えた時に、どこまで積極的な治療をするかをご家族に聞くのではなく、もっと前の段階から意識的にかかわって、その時が来たらどうしたいかという話をしながら、それを踏まえた医療、看護を提供していかなければならないと思っています。



チームで新卒看護師を育成する


 こうした看護を提供するには看護師のレベルアップが欠かせません。新卒看護師の教育では、1人の看護師をチームで育てるチーム支援型制度をとっています。チームのなかにエルダー、サポーターなどの役割をもった看護師がいて、交替制勤務のなかで現場に新人が一人取り残されることがないよう「誰にでも相談できる」状況をつくっています。


 働きやすい環境を用意することも重視しています。有給休暇は2020年度で全員が10日取得を目標に据え、平均取得は14日でした。また各部門の看護師長が作成する勤務表の確認は、しっかりやるようにしています。1カ月のうちに連休は最低2回、うち1回は土日を入れるとか、勤務と勤務の間隔は11時間以上空けるとか、連続勤務は5日以内とか。いずれも日本看護協会が提唱している基準です。「ヘルシーワークプレイス(健康で安全な職場)」を意識して、これをもとに「公平で、身体にやさしい勤務表」を目指しており、それぞれの所属長がしっかり作成してくれています。


 こうした環境を用意するのも、病院の経営が安定しなければ難しくなります。ですから、看護部の基本指針にも経営を意識することを掲げています。「断らない病院」に向けて取り組むことで入院患者数が増えたり、HCUの有効活用を進めることで稼働率が上がったりと、日々の医療を丁寧に実践することで経営的な数値も大きく変わってきます。空床の使い方にも工夫が見られますし、そのあたりの意識はかなり浸透してきていると思います。




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