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医療クラウドの可能性2|クラウドを前提にした医療ITとはどんなもの?

2020.06.23

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筆者プロフィール
塚田 智 氏
亀田医療情報株式会社 取締役

診療放射線技師、情報処理システム監査技術者、診療情報管理士。
日本IBM勤務後、電子カルテメーカーを立ち上げ、医療ITの推進注力している。


前回のコラムでは、現在の病院情報システムの多くがオンプレミスである理由を考察し、クラウドを利用することで医療にどのような変化が期待できるのか考えました。今回のコラムでは、クラウドを利用するための注意点と、医療ITをクラウドで提供するためにサービス提供者(システム開発者)が何をすべきかを考えるとともに、クラウドを前提にした医療ITがどんなものかを少し具体的に想像してみたいと思います。



クラウドを利用するための注意点


病院でクラウドを利用するために、最も注意が必要なのはネットワークの変更とセキュリティの確保でしょう。いままで病院内で閉じていたネットワークをインターネットに接続できるように変更し、そのためのセキュリティを確保しなくてはなりません。


病院とクラウドを接続するネットワークにどの程度の性能(転送速度や遅延など)が必要になるかは、事前に想定することがとても難しいです。利用者数は時間帯によって変化しますし、多くのネットワークは転送速度をベストエフォート(最も良い状態の値)で表示していますし、利用するサービスによってデータ量が異なります。不確実な要素が多く、最終的にはやってみなくては分からない、というのが正直なところです。ネットワークの障害対策も事前に検討しておく必要があります。当初は一般的な光回線を別会社で2回線用意して、使いながら最適な構成を見極めるのが良いと思います。


セキュリティの確保については、診療録等の電子保存のガイドラインが厚生労働省などから提示されています。このなかにネットワークに関する記述もありますので、これに参照することが良いでしょう。ガイドラインに従って施設ごとに適切な対応方法を決めていくことになりますが、施設ごとにクラウドを利用する目的や、利用するサービスは異なります。施設ごとの事情を考慮する必要があるため、セキュリティ対策を業者任せにはできません。病院の担当者もガイドラインを理解し、業者の提案が適切なものか判断しなくてはなりません。



クラウドの費用とその効果を比較することは病院経営の観点からも重要です。現時点でオンプレミスとクラウドのIaaSで、同等のハードウェア資源を準備することだけを比較するなら、オンプレミスの方が安価でしょう。比較の範囲を、院内の設備費用、管理費用、障害の頻度、定期的な更新作業などに拡大するとクラウドが優位になると思います。


地域の医療機関との連携や、クラウドにしかないサービスを利用したいなど、クラウドが必須な場合もあります。その場合はオンプレスとの比較ではなく、利用するサービスの費用と、それにより得られる効果の比較になります。どんな場合でも費用と効果を説明できるようにしておきたいものです。



サービス提供者(システム開発者)が何をすべきか


さて、病院のようにクラウドのサービスを利用する側でなく、私共のようなサービスを提供(システムを開発)する側が何をすべきでしょうか。

いままでオンプレミスで構築してきたシステムを、そのままクラウドに移行するのは簡単にできるでしょう。インターネットに開放されていないデータセンターを利用するのであれば、システムを変更せず稼働する場所を変更するだけなので、システムに変更無く対応できます。


パブリッククラウドのIaaSやPaaSに移行する場合は、いままで院内で外部からの攻撃がほとんど無い環境にあったものが、インターネットという攻撃を受けやすい環境に移行することになります。パブリッククラウドにあるIaaSやPaaSの機能を利用して、セキュリティを確保する必要があります。また、障害に強く、管理しやすくする工夫も必要になります。これらによるシステム(アプリケーション)の変更はあまりありません。



SaaSとして提供するためには、システムにとても大きな変更が必要です。SaaSは1つのシステムを多数のユーザー(複数の病院)が共有するのが前提ですので、ユーザーごとに使えるデータを分離する仕組みや、使える機能を限定するための権限管理を追加する必要があります。さらに、1つのシステムを変更すると全ユーザのサービスが変更されてしまうため、いままでのバージョン管理とは異なり、機能を細分化して頻繁にリリースすることが一般的です。これに対応するためシステムの開発手法を変更し、リリース手順を自動化する必要があります。オンプレミスのシステムの全体を一挙にクラウドに最適化するのは難しく、オンプレミスの資産を活かしながら、数年計画で順々にクラウドに移行することになります。



サービスを提供するときに一番大切にしたいのは、オープンなサービスを提供(システムを構築)することです。クラウドに対応したシステムは複数のサービスが連携して、より良いユーザー体験を提供するのが一番の特長です。例えば日本医師会が中心に開発している医事会計システムのORCAは、オープンソースでオンプレミス版を開発していましたが、最近ではSaaSでも提供を始めました。このクラウドORCAには、外部の電子カルテなどからアクセスするためのWEBサービスがあり、その仕様は公開されています。クラウドORCAで質の高い医事会計サービスを利用できれば、電子カルテメーカーが個別に医事会計を開発する必要がなくなり、大幅なコストダウンが期待できます。



クラウドで期待される医療IT


病院でクラウドを利用する環境が整い、サービス提供者もクラウドを前提にシステム開発を進めた場合に、医療ITはどのような姿になるでしょうか。こうなれば良いなという期待も含めて想像してみましょう。


今年初めからの新型コロナウイルスの感染拡大は、世界中で大きな混乱を引き起こしています。根本的な解決のためには治療薬やワクチンに開発が必須です。いま世界では治療薬とワクチンの開発のため、クラウドにあるコンピューター資源を共同利用して開発期間を短縮する取り組みが行われていいます。普段は使わないような大量のコンピューター資源を、必要なときに必要な量を確保できるのはクラウドの効果的な利用方法といえます。


創薬の分野のみでなく、患者さんごとに遺伝子情報から個別に効果的な治療薬を選択するプレシジョンメディシン(精密医療)にもクラウドにある豊富なコンピューター資源が利用されることでしょう。これまではハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)といって、特定の研究機関が自前で準備していた超大型コンピュータ―が、クラウドによって誰でも利用できるようになり、より個別性の高い治療ができるようになります。



新型コロナウイルスに関連して、日本ではオンライン診療の規制が大幅に緩和されています。現時点で初診の診察から投薬までをオンライン診療で完結できるようになっています。オンライン診療は、一般的なWEB会議システムを利用することもできますが、予約、問診、診療、投薬、会計までを一貫してサポートできるサービスも急速に普及しています。このようなオンライン診療のシステムはクラウドで提供されています。


問診システムは、定型的なテンプレートを使って質問の回答を収集するシステムが一般的でしたが、最近は過去の問診結果のデータを活用して、AIにより問診の回答から推定できる病名を提示するサービスもあります。このようなサービスは使えば使うほど回答と診断結果を蓄積できる仕組みができ、AIの精度向上による診断支援が期待できます。



電子カルテがサービスとしてクラウドで提供されることにより、在宅診療が容易になるでしょう。在宅からIoTデバイスでバイタルサインなどを自動的に収集し、自動的に継続的な見守りができ、いままでより多くの患者さんを対象にできます。このデータを地域医療連携に活用するもできます。さらに、データを患者さんに提供することで、患者さん自身で自己管理できるようになるでしょう。



新型コロナウイルスの感染拡大で、オンライン診療を中心にしたクラウドの利用が一気に普及しました。病院や診療所では手探りながらもクラウドを利用し始めています。ハードルが高いと思っていた患者さんにとっても、意外に簡単に使えることが確認でき、今後も継続して利用されることと思います。2021年3月からはマイナンバーカードを利用した健康保険のオンライン資格確認が始まります。オンライン診療とオンライン資格確認で、医療機関のネットワークが整備され、医療ITのクラウドの利用は大幅に進むものと思います。



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