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医療クラウドの可能性1

2020.05.25

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筆者プロフィール
塚田 智 氏
亀田医療情報株式会社 取締役

診療放射線技師、情報処理システム監査技術者、診療情報管理士。
日本IBM勤務後、電子カルテメーカーを立ち上げ、医療ITの推進注力している。



世界のIT業界ではクラウドの利用が盛んです。多くのサービス(システム)がクラウドに構築され、連携のためのインターフェイス(API)を公開することでサービスの価値を高め、よりよいユーザー体験を提供できるようになってきました。

日本の医療情報システムでは、まだオンプレミスのシステムが多く、クラウドのサービスはほとんど利用されていません。それは医療情報を扱う上で、セキュリティ確保への懸念やクラウドの価値を見出だせなかったことが原因だと思います。これらの問題は順々に解決されており、これからはクラウドの利用が進むことでしょう。

今回のコラムでは、現在の病院情報システムがオンプレミスである理由を考察し、クラウドを利用することで医療にどのような変化が期待できるのか考えてみましょう。



病院情報システムにオンプレミスが多い理由


まず現状の確認として、これまでの病院情報システムは多くがオンプレミスに構築されており、クラウドに構築することが少ない理由を考えましょう。主な理由を挙げるとすれば、私は以下の3つだと考えます。


1.厚生労働省などが示すガイドライン:

日本で診療録の電子保存が認められた当初は、クラウドが普及していない時期でもあり、セキュリティを重視して院内にデータを保管するように求めるガイドラインが示されました。そのため、ほとんどのシステムがオンプレミスに構築されてきました。ガイドラインは順次変更され、現在では電子カルテのデータでもクラウドに保管できるようになりました。ですが現在でも、従来のシステム構成を変更するリスクと、クラウドの利点を比較して、オンプレミスを継続している医療機関が多いように思います。


2.社会一般の認識:

個人の医療情報は重要かつ機微な情報であり、万が一にも漏洩するが許されない個人情報である、というのが社会一般の認識でしょう。さらに、医療機関で発生した診療録は発生源である医療機関内に保管しておくべきで、むやみに外部に持ち出すべきではない、という認識もあると思います。それをシステム構成に反映すると、医療機関内にサーバーを設置するオンプレミスが分かりやすく納得できます。最近ではクラウドに対する社会一般の理解が深まり、データを安全に保管しておく場所としてクラウドも選択肢の一つだと認識されるようになってきたと思います。


3.医療機関という組織と医療という業務の特性:

医療機関には専門職が集まった多数の専門部門があり、その中で業務が完結していました。診療業務における情報共有の必要性を考えると、部門内ですべての情報を保管することが一番重要で、次に医療機関内で診療業務に必要な情報を共有し、他の医療機関には限定された情報だけを提供する、というのが従来の医療情報の共有でした。つまりシステムを越えて幅広く情報連携する必要性が希薄で、情報連携するための基盤としてのクラウドの価値を見出だせなかったのです。最近は、チーム医療や地域医療連携のために、情報共有の重要性が増しています。



クラウドの種類と目的


さて、ここまでクラウドという言葉を幅広い意味で使ってきましたが、クラウドという言葉には多様な意味があり、使う人によって理解も異なります。ここで少し整理して認識を合わせておきましょう。私はクラウドを以下の3つに分けています。


1.データセンター:

施設内にあった物理サーバーを、サーバーを収容する専用施設に設置するのがデータセンターです。利用者が購入したサーバーを設置する場所(ラック)を専用施設内で提供するハウジングと、すでにデータセンターに設置されているサーバーをサーバー単位で貸し出すホスティングがあります。安全な場所にサーバーを設置することでセキュリティを確保し、安定した電源供給、温度管理、粉塵対策などによりサーバーの障害を減らすことができます。


2.IaaSとPaaS:

物理サーバーを個別に準備するのではなく、多数のサーバーを共有して、サーバー資源(論理サーバー)として貸し出すのがIaaSです。IaaSに加えてOSやミドルウェアも利用できるのがPaaSです。業務量の変化に応じてサーバー資源を増減できるのが特長です。また、サーバーの障害や経年劣化による更新に制約されず、長期間継続的にサーバー資源を利用することができます。


3.SaaS:

適切なサーバー資源を準備し、さらに業務システムを稼働させて、ユーザーに必要なサービスを提供するのがSaaSです。単体の業務システム(サービス)を提供することもできますが、複数のサービスを連携してよりよいユーザー体験を提供したり、他のサービスとデータ連携を簡単にするためのインターフェースを備えていたりするのが一般的です。

医療以外の業種では、オンプレミス・データセンター・IaaS・PaaS・SaaSのように順を追って発展して来ました。医療ITはクラウド対応が遅れた分、すでにある先進的なクラウドを利用することができます。



医療クラウドへの期待


クラウドは医療ITにどんな革新をもたらすでしょうか。これまで病院情報システムは医療機関内に設置され、外部と連携せずに稼働していました。これからは豊富なサーバー資源とグローバルなサービスを利用することで、多くの良い変化が起きるでしょう。私は次のようなことを期待します。


1.先進的で信頼性の高いサービスを手軽に利用できる:

サーバーやネットワークの技術は常に進化しています。しかし、それらを正確に理解し効率よく利用するには、多くの知識と経験が必要です。クラウドにあるサーバー資源やサービスは、十分な知識と経験をもった提供者が構築しており、既に質の高いものになっています。これにより、医療機関という組織規模では実現できなかったような、先進的で信頼性の高いシステムを手軽に利用できるでしょう。セキュリティ確保や障害対策についても、既にオンプレミスよりもクラウドのサービスが優位になっていると思います。


2.診療データを一元管理できる:

医療技術の高度化・専門化や、医療提供体制の最適化のために、日本でも医療機関連携の必要性が高まっています。医療機関は、それぞれの役割を持っており、一人の患者さんを診療するためには、医療機関間で診療情報を連携する必要があります。最終的には患者さんを中心にして診療情報を一元管理するサービス、すなわちPHRを提供することが適切であり、クラウドはその基盤に適しています。


3.外部の高度で多様なサービスを利用できる:

現在の電子カルテは医療機関内でのみ利用され、機能集約した1つのシステムで診療業務が完結できるようになっています。これからは、AIによる画像診断支援のような高度な診断支援機能や、医療機関の個別の要望に対応する多様なサービスが電子カルテと連携して利用できるようになるでしょう。高度なサービスは多くのサーバー資源を必要とするためクラウドで提供されることでしょう。多様なサービスはインターフェースを公開して電子カルテと連携するサービスとして提供されるでしょう。電子カルテは診療業務の基盤であるとともに、複数の診断支援サービスと連携することで診療の質を向上させるのに不可欠なツールになるものと思います。



今回のコラムはここまでにします。次回のコラムでは、クラウドを利用するための注意点と、サービス提供者(システム開発者)が何をすべきかを考えるとともに、クラウドを前提にした医療ITをもう少し具体的に想像してみたいと思います。

クラウドに出遅れた感のある医療ITですが、これからは積極的にクラウドを使って、いままでにないサービスを創造して、医療と医療情報の価値を高めていきましょう。





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