メール
メニュー

「コロナ発生後の病院経営に何が起こったか」
JBHC医療総合セミナー2021 Day4講演禄

2021.11.25

omichishi.jpg

●演者プロフィール●

大道 道大(おおみち・みちひろ)

社会医療法人大道会 森之宮病院 理事長・院長




「JBHC医療総合セミナー2021」のDay4(2021年7月1日)では、社会医療法人大道会 森之宮病院理事長・院長の大道道大氏をお招きし「コロナ発生後の病院経営に何が起こったか」と題して、コロナ禍における病院経営の現状や、地域包括ケアシステムの実現を目指す同院の取り組みなどについてお話いただきました。



コロナ禍で赤字病院が拡大
厳しさ増す医療法人の経営


 最初に、3つの病院団体(一般社団法人日本病院会、公益社団法人全日本病院協会、一般社団法人日本医療法人協会)が行った、新型コロナウイルスの感染拡大による病院経営状況の調査結果について紹介します。調査は2020年4月から開始しており、今回(2020年度第4四半期)で4回目です。対象病院は4410病院で、有効回答数は29%でした。全国の平均に比べて、大阪は特に新型コロナウイルス感染症入院患者の受入れ病院の比率が高く、2021年3月末時点で10件に6件がコロナ患者を受け入れている状況でした。


 2021年1月と2020年1月の医業収支を比較すると、「コロナ患者を受け入れていない病院」「受け入れている病院」「一時的にせよ外来あるいは病棟を閉鎖した病院」のいずれの区分においても、赤字病院が広がっており、その傾向は大阪も同様です。また、2021年2月と前年同月を比較しても同じで、2021年3月になり若干持ち直しています。


 外来患者数は回復傾向にある一方で、入院患者数は前年の水準にまで戻っていません。手術件数も前年を下回ったままです。救急受入件数は2021年3月は前年同月を上回りました。また、100時間以上残業する医師の数は前年に比べて減っています。コロナ診療は、当該部署は忙しくて大変ですが、一般の疾患を診る部署においては、むしろ患者数が減ったので、残業時間が少し減ったのかもしれません。


 2020年度通年の経営指標について、「全病院」「コロナ患者受入れなしの病院」「コロナ患者受入れありの病院」「一時的にせよ外来病棟を閉鎖した病院」の4区分ごとに見ていくと、一番赤字幅が大きいのは、一時的にせよ外来病棟を閉鎖した病院。次が、コロナ患者を受け入れた病院で、医業利益は前年度に比べてマイナス4.7ポイントとなっています。これに支援金を加味するとプラス2.4ポイントになります。


 大阪の場合は、コロナ患者を受け入れている病院ではマイナス4.4、外来病棟を閉鎖した病院ではマイナス6.4で、ここに支援金を算入すると、前者がプラス4.2、後者がプラス5.4となります。支援金が効果的に効いているものと思われますが、現場の感覚は少し違います。


 そこで、病院の設立母体ごとにこの統計を見ると、国立病院や自治体病院は、支援金を入れなければ医業利益は前年度比マイナスで、支援金を入れると大きく改善しプラスに転じます。一方、医療法人も支援金を入れるとプラスになりますが、プラス0.7ポイントと低水準にとどまります。大規模にコロナ患者を受け入れ多額の支援金を得ることで、驚くほど収支が良くなった病院もあれば、支援金を入れてもまだまだ赤字という病院に二極化しているのが、その実態です。



さらなる病院のDX化に向けて
マイナンバーカードの普及が必須


 コロナの発生で思わぬ進展を見せたのが、病院のDX化です。コロナ禍において、オンライン診療が初診から特例として可能になりました。一時は広がりを見せていたのですが、その後どうなったのかというと、日本病院会の調査によると、電話再診は7割以上の病院が行っていますが、オンライン診療は12%にとどまりました。


 また厚生労働省の調査によると、電話や情報通信機器を用いた診療を実施できるとして登録した医療機関数は、2020年4月から増えていたのですが、現状は頭打ちで、なかなか2割に達しないのが現状です。登録医療機関が多いのは圧倒的に東京、大阪の大都市圏に限られます。


 年齢階層別の受診者の割合は、電話診療もオンライン診療もほぼ同じで40歳代以下が過半を占めており、最も多いのが10歳以下の小児です。疾患・症候別には感冒様症状が上位を占め、処方された医薬品はカロナールが圧倒的に多くなっています。


 2021年6月4日に厚労省からデータヘルス改革に関する工程表が発出されました。マイナポータルを通じて、自身の保健医療情報を把握できるようにする仕組みの整備が順次スタートします。一方で難航しそうなのが、全国的に電子カルテ情報を閲覧可能とする基盤の構築です。これを実現するには、電子カルテの標準化、特に医療情報の標準化をして、さらには電子カルテの仕様を標準化、共通化することが必要ですが、スタート時期すら決まっていません。


 我々森之宮病院(大阪市城東区)はオンライン資格確認の先行病院として手を挙げていたので、2021年2月にテスト運用をしました。しかし、不具合が出たため動かず、復旧のめども立っていません。問題は2つあります。1つは顔認証付きカードリーダーの申込施設数が少ないこと。さらにはマイナンバーカードの交付数が少ないことです。人口対比で3割にとどかないのは、なかなか厳しいものがあります。高齢者にはあらかじめ作って、配ってあげるぐらいしないと、利用は進まないでしょう。



地域包括ケアシステムの実現へ
行政・住民と連携し防災も強化


 我々は以前から、我々流の「地域包括ケアシステム」をつくりたいと思っていました。そのために欠かせないことは、行政・住民・介護事業者との連携です。


 まず行政と連携しようと思い、2013年に大阪府市医療戦略会議で民間病院を核とした地域づくりの在り方についてプレゼンしました。それを受けて、大阪府はモデルエリアの策定を検討し、2年後に「スマートエイジング・シティ構想」として予算がつきました。


 森之宮地域も当院を中心とした高齢者にやさしい街づくりのモデル地区となりました。具体的には、我々と城東区役所(大阪市)、UR西日本が協定を結び、3者協議を行いました。ほかにも消防、警察、郵便局、インフラ業界、地域団体などと支援体制をつくっていただき、定例会議を行うことにしました。


 これとは別に、福祉関係の助成金事業にも手を挙げて、2019年度から「SAC高層賃貸住宅における災害弱者支援事業」を行っています。初年度は実態把握調査を行い、2020年度は要援護者情報の管理システムを構築。今年度は各種運用マニュアルを作成する予定です。


 地域包括ケアシステムもそうですが、その一方で、防災の拠点としての病院の在り方についても考えいて、まずは院内の電波環境をよくするために、院内に4つのキャリアそれぞれの基地局を立てました。さらに病院の屋上に共有アンテナを立てて、5Gが使えるようにする予定です。


 5Gがあれば、IoTセンサーをたくさんぶら下げることができるので、例えば、ウエアラブルな医療機器を使用して、生体情報を取得することも容易にできます。もう1つ、このアンテナが病院の赤コンセントにつながっていれば、震災が起きて停電になったとしても、自家発電によって通電しているので、スマホなどで情報を取ることができます。


 「もりりんネット」という地域連携ネットワークシステムも構築しました。当院内にもりりんネット用のサーバーを立てて、各登録医とVPNでつなぎ、診療情報の閲覧や検査のウェブ予約ができるようにしました。現在、26のクリニックの先生方に使っていただいています。





thumbnail_kintone.pngkintone

紹介状管理やインシデント管理に活用できる、

業務改善プラットフォーム。



blanc.png頼れるカルテをクラウドで。

blanc(ブラン)の製品紹介はこちら


お問い合わせはこちらから矢印